運動指導経験がないのにレクリエーションの実施や利用者さんからリハビリトレーニングについて聞かれる等の経験は介護士さんなら誰しもが経験あるのではないでしょうか?
運動指導ではこのメニューは怪我のリスクがあってしてはいけない運動かな?と不安になるかたがいると思いますが、今回紹介するリハビリ方法は膝にかかる負荷がとても低いものです。
指導経験がない専門職外の方でも安全に利用者さんに紹介出来るものを選んだので積極的に実施してみてください。
なんで膝が痛むの?
高齢者の膝の痛みは主に、
- 半月板のすり減り
- 変形による膝関節可動域制限
この2点から来ることが多いです 結果として、2点の現象が起きていますが 要因を考えると骨が正常な位置にないことが原因になります。
正常な骨の位置って?
膝関節は解剖学的用語でいうと蝶番関節といいます。
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蝶番は軸があるため一定の方向にしか動きません。
膝関節は蝶番と同じような動きしかできない構造にもかかわらず、軸が存在しない代わりに回りを靭帯で固定する不安定な関節です。軸が無い分太もも側とすね側に本来あるべき隙間が詰まってしまったり蝶番ではありえない斜めに動くような動きも出来てしまいます。
痛みの緩和や歩行の安定に効果的!
骨の位置をコントロールするのは 膝周りの筋肉です。
長年経過していたり手術をしていたりする場合、変形性膝関節症や人工関節等により完全に改善することが難しい場合もありますが、膝周りの筋バランスを改善することで骨のずれを修正し痛みが緩和したり膝関節の可動域を広げることが出来ます。これにより立位や歩行が安定する可能性があります。
ヒールスライド
踵に滑りやすいタオルをはさんで寝ながらまたは座った状態で行います。足を延ばした状態から踵をお尻方向に擦るように膝を曲げます。踵がベットまたは床から離れないように行います。
この時力が入るべき場所は太ももの裏(ハムストリングス)です。踵が離れると太もも前に力が入ってしまいます。20~30回ほど片足ずつ行います。ハムストリングスは姿勢を保持するのに活躍してくれます。
意識して使わないと活動が低下しやすい筋肉なので、運動レベルの低下した方にとってとても重要な運動になります。
トゥーレイズ
寝ながらまたは座った状態で行います。足首を90°にした状態からつま先をすね方向に引き上げます。この時指先だけが動くのではなく足裏全体を引き上げます。すねの前に力が入るように行いましょう。
30回程度動かすとすねの前が張ってくるのがわかるかと思います。この運動の目的はすね側の筋トレもそうですが、ふくらはぎの筋肉のストレッチも狙っています。
ふくらはぎの筋肉は膝をまたいで太ももの裏に付着します。ふくらはぎが固いと太ももの骨をすねの骨側に引っ張るため、膝関節を狭くしてしまい骨の距離が縮まります。結果的に蝶番がうまく畳めず膝関節の可動域が狭くなってしまいます。
リハビリとしてほぼすべての高齢者が実施している運動につま先立ちがあります。
ふくらはぎと逆の動きをするすねの前の筋肉を動かすとふくらはぎの筋肉が緩みます。
ふくらはぎが良くつる方にも効果的です!
ふくらはぎの筋肉が緩むと立ちやすくなったり、膝が曲げやすくなるケースが非常に多いためオススメの運動です。
セッティング
ベットか床で座った状態が望ましいですが椅子に座った状態でも構いません。膝の裏にこぶし程度の高さに丸めたタオルを挟みます。膝の裏でタオルを強く押しつけます。
このとき力が入るのは太ももの前膝上の付近です。しっかり膝が伸び切るとかかとが浮いてきます。ここまで力を入れられると望ましいです。
膝の症状によってポイントが変わりますが、多いパターンとして膝に対して太もも側の骨が後ろにずれていることで膝が曲がりにくかったり痛みを感じていることがあります。この場合タオルを置く位置を膝裏よりも少し太ももよりにしてあげることで、太もも側の骨の後方移動を防ぐことが出来、より効果的になります。この運動で膝を伸ばしきれないと立位になった時に膝が曲がったまま立っている状態になります。
皆さんもほんの少しだけ膝を曲げて立っていただくとわかりますが、膝が曲がっていると太ももやふくらはぎなどに力がはいった状態で 立つことになります。これでは膝関節の骨と骨の距離がどんどん狭くなってしまうので 改善には向かいません。
膝を伸ばし切った状態で立つと骨で体重を支えられるので余計な筋力を使わず、筋肉が緩み膝関節の骨と骨の距離を取れるため可動域が広がったり痛みが軽減したりします。
介護職のやりがいのために
利用者さんの体の改善に興味がある方は、運動指導業務がある単発バイトを利用してスキルアップを目指してみるのはいかがでしょうか。
介護職の方は利用者さんに体の悩みを相談されることがとても多いと思います。テレビやネットのあいまいな情報ではなく、具体的な体の知識を持っていることでより信頼感が生まれ、やりがいとしてさらにいきいきと介護職に取り組めるのではないでしょうか?
安全かつ効果的に
今回は膝の痛みに対して効果的なリハビリを3つお伝えしました。安全であることが大前提の3選ですので実施によってマイナスになることはほぼありません。利用者さんとのコミュニケーションのきっかけとしてもご利用いただけると嬉しいです。