バルーンカテーテルを使用している方の介護に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。尿道カテーテルの留置が行われている場合、介護する際の注意点がいくつか存在します。
バルーンカテーテル
介護サービスの利用者の中には、バルーンカテーテルを使用している方も多くいらっしゃるでしょう。ここでは、バルーンカテーテルが必要な状況やそのメリットについて解説いたします。
バルーンカテーテルとは
バルーンカテーテルとは、尿を出すために尿道から膀胱へ挿入するチューブのことです。膀胱内でチューブ先端のバルーンを膨らませて固定し、挿入したままの状態にすることで持続的かつ安全に尿を排出できます。
正式には膀胱留置カテーテルと呼ばれ、自力で排尿できないときや尿量を正確に測定する必要があるときの処置として、高齢者にも用いられます。
バルーンカテーテルが必要な状態|排尿障害
バルーンカテーテルは、排尿障害があるために必要と判断された場合に使用されます。排尿障害は、大きく分けて畜尿障害と排出障害の二つがあります。
- 蓄尿障害:尿を溜められない状態
- 過活動膀胱、肥満などの生活習慣病、膀胱炎など
- 排出障害:尿を出せない状態
- 前立腺肥大症、脳血管疾患や糖尿病などによる神経因性膀胱、子宮脱など
バルーンカテーテルのメリット
バルーンカテーテルのメリットは以下の通りです。
- 尿を確実に排出できる
- 尿量の確認がしやすい
- 失禁がなくなる
- 介護者の負担が少ない
バルーンカテーテルを入れている間、尿は自然と尿バックに出ていくため、尿が膀胱に留まることなく確実に排出され、尿の量や状態を確実に確認することができます。また、失禁がなくなることで、本人や介助者の負担が軽減されるメリットがあります。
バルーンカテーテルで起きやすいトラブルと対策
バルーンカテーテルには多くのメリットがありますが、反面、感染症が生じやすいなどのデメリットも存在します。バルーンカテーテルの使用により起こるトラブルとその対策について見ていきましょう。
尿路感染症|尿バックの位置に注意
バルーンカテーテルを使用していると、尿道が身体の外と接触している状態になるため、常に感染の危険があります。また、尿バッグ内に溜まった尿が逆流することも感染の原因となります。
感染防止のためには、尿バッグを床などの不潔な場所に触れさせないよう注意し、逆流防止のため尿バッグは常に膀胱より下に置くようにします。さらに、チューブの折れ曲がりや挟み込み、つぶれがないようにする対策が必要です。
皮膚トラブル|皮膚観察と清潔保持
バルーンカテーテルは、デリケートな部分にカテーテルが挿入されているため、皮膚トラブルが起きやすいです。また、チューブを固定するテープによって、かぶれや痒みが生じることもあります。挿入部の発赤や腫れに注意し、テープで固定している部分の皮膚状態を観察することが重要です。
トラブルが見られた場合は、ケアマネージャーや看護師に報告して対応してもらいましょう。皮膚トラブルを予防するためにも、シャワーや陰部の洗浄などで清潔な状態を保ちましょう。
尿の量や状態の異常|こまめな確認・報告
バルーンカテーテルを使用している理由は排尿障害のためですが、尿の量や状態を観察して異常がないかを確認する必要があります。尿をチェックすることで、異常の早期発見や水分不足などの生活の変化も把握することができます。尿量の減少や色の異常、血尿、浮遊物等が見られた場合は、すぐに看護師や医師、ケアマネージャー等に報告しましょう。
高齢者を介護するときの注意点
バルーンカテーテルを使用している利用者の介助には、確認するべき注意点があります。介護現場のシーン別に解説いたしますので、参考にしてください。
基本の注意点
常に気を配るべき基本的な注意点には以下のものがあります。
- 尿バッグは膀胱より下の位置になるようにする。
- 尿バッグは床に置かず、S字フックなどを利用して吊るす。
- 利用者本人が抜去しないようにする。
感染症防止のため、尿バッグの位置や清潔の保持には気を付けましょう。また、認知機能の低下により、バルーンカテーテルを使用していることを認識できていない方もいます。
カテーテルを挿入されている違和感から、自分でチューブを抜いてしまうケースも見られます。抜去が続く場合は、看護師などに報告して対策を考えましょう。
入浴の注意点
入浴時も感染の恐れがあるため、尿バッグが膀胱より下にある状態を維持すること、尿バッグが浴室の壁や床、物品に触れないことを常に確認してください。チューブへの引っかかりや折れ曲がりにも気を配りましょう。
利用者に適した入浴方法や頻度などは、医師や看護師に確認すると良いでしょう。
おむつ交換の注意点
バルーンカテーテルを使用している場合、おむつ内に排尿されることはありませんが、清潔保持のために陰部洗浄を行います。はじめにカテーテルや尿バッグの位置を確認するのがポイントです。利用者の身体を動かすときは、チューブを巻き込んで圧迫や折れ曲がりが生じないように注意してください。
生活環境にもよりますが、巻き込みを防ぐため、尿バッグは利用者が身体を向ける方向に吊るすなどの工夫ができます。利用者と尿バッグの位置を常に考えながらおむつ交換にあたりましょう。
おむつ交換をしながら皮膚状態の確認も同時に行いましょう。
尿破棄の注意点
尿バッグ内にたまった尿を捨てる際は、介護者への感染防止のため、手袋やガウンを着用してから行います。その際、尿バッグの排出口が回収容器に接触しないよう十分注意してください。
尿量や尿の状態をチェックして記録し、異常が見られる場合は看護師や医師と連携して診察につなげましょう。
車いす使用時の注意点
車椅子を使用するときは、移乗時や移動時にチューブを巻き込まないよう注意が必要です。チューブがベッド柵や車椅子のレバーに引っかかったり、座面に挟まれて圧迫されないように気を付けてください。
尿バッグを車椅子の背もたれに吊るす場合、後ろを通る人に引っかからないよう十分な空間を確保しましょう。
女性の場合の注意点
女性は尿道が短く、膀胱までの距離が短いため、感染症を引き起こしやすい特徴があります。
シャワーなどで清潔保持する他、尿バッグの取り扱いにも留意しましょう。
男性の場合の注意点
男性は動いたときや歩く際にチューブが引っ張られて尿道を損傷する危険があります。
チューブは少しゆとりを持たせて、しっかり固定しておくことが大切です。
男女別チューブ固定の向き・おむつからの出し方
バルーンカテーテルを使用している方でおむつも併用している場合、チューブはおむつの上か下から出します。チューブの固定の向きは性別によって異なるため、男女別に見ていきましょう。
女性:大腿部の内側に固定
女性の場合、チューブを脚側に自然に沿わせ、動いたときに引っ張りが生じないようにゆとりを持たせた状態で、大腿部内側にテープで固定します。
男性:腹部に固定
男性の場合、チューブを引っ張らないように注意しながら、陰茎を頭部の方に向け、少しゆとりを持たせて下腹部の上にテープで固定します。陰茎を下に向けると、尿道が曲がってしまい、圧迫で血流障害が起こる可能性があります。
介護職員は注意点を把握して安全・適切にサービス提供しよう
介護サービスの利用者の中には、膀胱留置カテーテルの処置を受けている方も多くいます。バルーンカテーテルは、介助者の負担が少なく、確実に排尿ができる一方で、感染症や皮膚トラブルが起こりやすいデメリットもあります。特に注意したいのは感染症のリスクです。
尿バッグを膀胱より上にあげない、尿バッグを直接床に置かないなど、注意を払いましょう。尿の状態や皮膚の状態に異常が見られた場合は、速やかに看護師や医師、ケアマネージャーに報告し、連携して対応しましょう。