【処遇改善加算を算定するにあたって】利用者への説明文の工夫と重要性!

介護保険法において、介護事業所は介護サービスを提供する際、あらかじめ利用者またはその家族に対して説明を行い、同意を得る必要があります。処遇改善加算の算定や加算区分の変更は、利用者負担の変更にあたるため、これに対する利用者の同意が必要です。このことが利用者にとって自己負担の上昇を意味するため、理解を得ることに苦労している事業所も多いのではないでしょうか。

今回では、利用者への説明が必要な理由と、その理解を得るためのポイントについてご紹介します。

目次

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そもそも処遇改善加算とは?

介護職員に対する処遇改善制度とは、介護の現場で働く介護職員に対して処遇改善を図るための環境整備や賃金改善に充てることを目的に創設された制度です。

処遇改善が始まったきっかけは、介護業界の賃金が他の産業に比べて低いことや人手不足における人材確保などが理由にあるようです。2023年現在、介護職員に対しての処遇改善制度には3種類の加算が存在します。

ここでは、それぞれの内容について詳しく解説します。

参考:介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算の概要

介護職員処遇改善加算

介護職員の処遇改善制度において、「介護職員処遇改善加算」は他の加算を算定するにあたり、算定しておかなければならない基礎部分にあたります。

介護職員処遇改善加算には、加算Ⅰ~Ⅲまでがあり、いずれも職場環境等要件を満たさなければなりません。

介護職員等ベースアップ等支援加算

次に「介護職員等ベースアップ等加算」についてご紹介します。処遇改善制度における2階部分にあたるものですが、月額9,000円相当が加算として支給されます。

介護職員処遇改善加算の加算Ⅰ~Ⅲを取得しておく必要がありますが、事業所の判断により介護職員のみならず他の職員へも処遇改善の収入を充てることができるような制度となっています。

■対象:介護職員。ただし、事業所の判断により、他の職員の処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認める。

■算定要件:以下の要件をすべて満たすこと。
・処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)のいずれかを取得していること
・賃上げ効果の継続に資するよう、加算額の2/3は介護職員等のベースアップ等(「基本給」又は「決まって毎月支払われる手当」の引上げ)に使用することを要件とする。

介護職員等特定処遇改善加算

3つ目に「介護職員等特定処遇改善加算」についてもご紹介します。

処遇改善制度における3階部分にあたり、上記で紹介した処遇改善加算よりも取得難易度は高くなっております。具体的には、職場環境等要件に関して介護職員処遇改善加算は1つ以上取り組んでいる必要があるのに対して、 介護職員

特定処遇改善加算 は区分ごとにそれぞれ1つ以上取り組まなければなりません。

■対象:事業所が、①経験・技能のある介護職員、②その他の介護職員、③その他の職種に配分
■算定要件:以下の要件をすべて満たすこと。
※介護福祉士の配置割合等に応じて、加算率を二段階に設定。

  • 処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)のいずれかを取得していること
  • 処遇改善加算の職場環境等要件に関し、複数の取組を行っていること
  • 処遇改善加算に基づく取組について、ホームページ掲載等を通じた見える化を行っていること

処遇改善加算を算定するにあたり利用者への説明が必要な理由

処遇改善加算を算定するにあたって、利用者への説明が必要になります。

なぜ説明が必要になるのでしょうか?

ここでは、利用者への説明が必要な理由を解説します。

参考:第2章 加算取得に際して事業所・施設で行うべきこと 2.9 利用者の同意を得る

介護保険法における利用者負担の変更に伴うため

介護保険法における指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準では以下のように定められています。

【第八条】
指定訪問介護事業者は、指定訪問介護の提供の開始に際し、あらかじめ、利用申込者又はその家族に対し、第二十九条に規定する運営規程の概要、訪問介護員等の勤務の体制その他の利用申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項を記した文書を交付して説明を行い、当該提供の開始について利用申込者の同意を得なければならない。

処遇改善加算を算定するにあたり、利用者負担の変更が生じるため、利用者への説明が必要になるようです。

参考:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準
参考:介護保険最新情報 Vol.740

重要事項説明書の変更に伴うため

処遇改善加算の算定には、利用者負担が発生することをお伝えしました。介護保険法において、利用者における費用負担に変更が生じた場合には、利用者や家族に対して説明すると同時に、重要事項説明書等の変更をおこなわなければなりません。

処遇改善加算に限らず重要事項説明書の変更に関して書面上でも利用者や家族に対して同意を得ることが求めらています。

処遇改善加算を算定する事前準備

処遇改善加算を算定するにあたり、利用者への説明について苦慮されている事業所もあるのではないでしょうか。処遇改善加算の算定は介護職員においては非常に喜ばしいことですが、利用者にとっては自己負担の上昇につながるため、利用者サイドへの分かりやすい説明が求められます。

ここでは、処遇改善加算の算定や加算区分の変更をおこなう前にやるべきポイントについてご紹介します。

算定における変更点の確認

重要事項説明書の変更に伴い、処遇改善加算についての理解を深めておくことが大切になります。利用者や家族は介護に関する制度について詳しい訳ではありません。

相手が理解できるように分かりやすく説明するために処遇改善加算による利用者への変更事項などを把握しておくことが重要になります。また、変更に際しての申請には、介護職員処遇改善計画書、就業規則・給与規程などの必要書類を準備しなければなりません。

ご不明なことがある場合には、各自治体の介護保険の担当部署に問い合わせることもできますので事前に確認しておきましょう。

重要事項説明書の変更

重要事項説明書は、介護サービスの提供をおこなう前に説明と同時に利用者や家族へ配布する書類になります。そのため、処遇改善加算の算定によって変更されたサービス内容や利用料金について書かれた重要事項説明書の再作成が必要になります。

重要事項説明書に記載する内容は以下になります。

  • 事業概要や運営方針
  • 職員体制や人数、業務内容
  • サービス内容と利用料金
  • 苦情に関する体制
  • 秘密保持や事故発生時の対応などの重要事項

算定するにあたり上記への変更が生じるため作成が必要になります。

利用者や家族への説明

料金の変更やサービスの変更などの事項は利用者や家族がもっとも気になる部分です。そのため、相手へ寄り添った分かりやすい説明が求めらます。

利用者や家族は介護保険制度に詳しい訳ではないため、配慮しておくと信頼関係の構築につながるのではないでしょうか。

利用者より書面での同意を得る

利用者や家族への説明は書面でも必要になります。書面では、利用者や代理人のサイン、押印を求める形の形式になります。

書類で残す目的は介護保険制度で決まっていることも理由にあるのですが、後のトラブル予防にもなり、記録として残ります。

処遇改善に関する加算等の取得状況

介護職員の処遇改善に関する加算等の取得状況をみてみると、令和5年度4月時点のものは以下になります。

  • 介護職員処遇改善加算:93.8%
  • 介護職員等ベースアップ等加算:92.1%
  • 介護職員特定処遇改善加算:77.0%

いずれも高水準の取得率で推移しているようです。

参考:介護職員の処遇改善に関する加算等の取得状況

未算定の事業所が算定をためらう理由

介護職員処遇改善加算を取得していない事業所における加算を取得しない理由をみてみると、「事務作業が煩雑」が44.3%、「利用者負担の発生」が37.8%、「対象の制約のため困難」が30.4%となっています。

利用者への対応に苦慮している事業所も多いため、加算区分の変更に関しても同じ理由があてはまると思われます。

参考:平成28年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要

利用者から同意を得る工夫

利用者負担の発生などで利用者や家族からの同意を得ることに苦慮されている事業所も存在することをお伝えしました。しかし、処遇改善加算を算定することは介護職員の処遇改善を通じて利用者の介護満足度も向上するのではないでしょうか。

それでは、利用者からの同意を得るための工夫についてご紹介します。

算定するまでに前もって説明する

算定にあたり、同意をいただくまでに時間がかかることが想定されます。自己負担額の上昇は利用者からすると不利益に感じてしまいます。

すべての方がすんなり納得してくれるとは限らないため、同意を得るまでの時間は長めに見積もっておきましょう。

ホームページを運用し変更内容を周知する

事業所のホームページなどでお知らせをおこなうと利用者や家族がいつでも確認できるようになります。新規利用者の獲得に向けても事業所の活動をアピールできるため、有益となるのではないでしょうか。

介護職員等特定処遇改善加算を算定するにあたり、「見える化」の取り組みにも含まれるため、未算定の事業所では算定に向けた要件をクリアできます。

利用者が理解しやすいように作成

重要事項説明書の変更や利用者負担の変更に伴って説明が求められることが介護保険制度では決まっていることをお伝えしました。しかし、もっとも大切なことは利用者や家族が理解できるよう説明に配慮することであると考えます。

具体的には、以下のようなことを説明に盛り込むとよいでしょう。

  • 介護職員処遇改善加算がなぜ必要なのか
  • 利用者にとっても利益になる部分を説明
  • 利用者や家族が分かりやすいような料金表の作成

分かりやすく説明することが利用者からの同意を得るカギになる!

処遇改善加算を算定するにあたり、利用者への説明に苦慮することがある一方、処遇改善加算を算定するメリットは職員だけでなく介護の質の向上や職場環境改善などによって利用者にも存在します。そのため、自己負担額の上昇というデメリットばかりに目がいかないようサービスの向上にもつながる旨をしっかりと説明することが利用者や家族の理解を得るために求めらるのではないでしょうか。

対応に苦慮される場合には、自治体の介護保険の担当部署などに相談してみるのもおすすめですので、加算取得に向けて工夫を凝らしてみましょう。

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この記事を書いた人

Iharaのアバター Ihara 運営者

15社以上のオウンドメディア・コンテンツの企画・戦略設計の経験を持つマーケティングアナリスト。大学在籍時に中小企業診断士一次試験突破。ASO・SEOを中心に活動しており、アプリ・インフルエンサーマーケティングにも精通がある。
介護・看護職のための単発バイトメディア「カイテク・メディア」の編集長。
介護・看護職のよりどころ「ケアマガジン」の運営者。

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