「最近介護施設の退職者が多くて困る。退職者を減らす方法はないかな」?介護施設を運営しているひとにとって、職員の退職率が高いことは死活問題ですよね。
処遇改善加算は、介護施設で働く職員の給料アップなど、待遇を改善する目的で導入されています。この記事を参考に、ぜひ職員の退職率が低い介護施設を目指してください。
介護職員処遇改善加算の目的
介護職員処遇改善加算は、介護職員が働きやすい職場を作るための制度です。この制度の目的は、以下の通りになります。
- 事業所の事務負担軽減
- 介護職員の給料アップ
- 介護職員の人材確保
- 職場環境の改善
上記の内容について、詳しく解説していきます。介護施設の待遇を改善して職員の退職を防ぎたいひとは、ぜひ最後まで読んでいってください。
事業所の事務負担軽減
介護職員処遇改善加算の目的は、介護施設の事務負担を軽減することです。処遇改善加算が導入されたことで、加算の申請手続きが一本化されたので事務負担は大幅に少なくなりました。これまでは、処遇を改善するための加算手続きがいくつもの区分に分かれていて、それぞれの区分ごとに申請していたのです。それが、処遇改善加算によって区分が統合されました。介護職員の処遇や基本給のベースアップが簡単にできるようになっています。
介護職員処遇改善加算は、事務仕事の負担を軽減してくれました。これまでは介護施設の職員が複雑な加算手続きをしていましたが、手続きが一本化されています。介護施設の事務負担軽減は、職場環境の改善にもつながっています。
介護職員の給料アップ
介護職員処遇改善加算の目的2つ目は、介護職員の給料アップです。処遇改善加算は、国から介護職員の給料アップを目的として支給される補助金なので、介護職員の待遇が向上します。具体的な加算額は下記のように3段階に分かれています。
- 介護職員処遇改善加算Ⅰ…月額37,000円相当
- 介護職員処遇改善加算Ⅱ…月額27,000円相当
- 介護職員処遇改善加算Ⅲ…月額15,000円相当
参考:厚生労働省「処遇改善に関する加算の職場環境等要件
処遇改善加算は、介護施設職員一人ひとりの基本給をアップさせるために支給される加算です。
介護業界は業務負担と給料が見合っていないと言われてきた業種ですが、この加算によって待遇を改善できます。
介護施設の人材確保
介護職員処遇改善加算の目的3つ目は、介護施設の人材を確保することです。加算によって介護業界の退職者を減らすことは、人材の流出を防ぐこととも言えます。とくに、特定処遇改善加算では介護職員の中でも経験や資格を持つ職員の賃金アップが可能です。賃金アップの基準は事業所ごとに決めていますが、能力が高いひとの待遇を改善できます。
処遇改善加算は、介護施設の人材を確保することにつながります。具体的なキャリアップの方法を国に提出することで処遇改善加算の対象になるので、人材の損失を防ぐ効果が期待できるのです。
職場環境の改善
介護職員処遇改善加算の目的5つ目は、職場環境が改善できることです。加算の制度を利用するためには職場環境の要件を満たす必要があるので、働きやすい職場環境に生まれ変わりますよ。職場環境の要件を一部紹介します。以下の通りです。
- 他業界から転職者や主婦などを採用する
- 働きながら介護福祉士資格取得を目指す職員への支援
- 上位者や職場の担当者によるキャリア面談
- 職員の負担軽減のための介護技術習得支援
- 介護ロボットや見守り機器の導入による負担軽減
上記のように職場の環境を改善して、介護職員にとって働きやすい職場を作ることで処遇改善加算が認められる仕組みです。このおかげで介護現場は、職員にとって働きやすい職場に変わっています。
介護施設職員が退職する理由
ここでは、介護施設の職員が退職する理由について紹介します。給料の少なさなど、多くの理由によって介護業界は人材が流出しているのが実情です。主な理由は下記の4つです。
- 給料が少ない
- 人間関係のトラブルが起こる
- 精神的・肉体的な負担が大きい
- 施設と自分の方向性がずれている
これらの退職理由について説明していきますので、退職者を減らしたい介護施設経営者の方は参考にしてください。
給料が少ない
介護職員が退職する理由として最も多いのは、給料が少ないことです。介護職は仕事量と給料を比べてみると、他業種よりも少なくなっています。
厚生労働省の調査によると、令和4年度の介護職員平均給与は31万8,230円でした。
出典:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇等調査結果」
全産業の平均給与額が39万1,408円なので、介護業界は平均よりも7万円以上低いことになります。介護職員が退職するのは、給料が低いからです。長時間労働や夜勤などで負担が大きい割に給料が平均以下なので、つらくなった職員が退職していきます。
処遇改善加算を有効に使って、介護職員の給料をアップする必要があります。
人間関係のトラブルが起こる
介護職員の退職理由で多いのは、人間関係のトラブルです。職員同士のコミュニケーションが取れなくなると、人間関係のトラブルが起こりやすくなります。たとえば、施設内でトラブルが起こったときに他の職員に責任を押し付けようとする職員がいる職場は要注意です。そのような職場は、信頼関係が壊れてしまい、コミュニケーションも疎かになります。
介護職員は、人間関係のトラブルで退職するひとが多いです。人間関係のトラブルは利用者にも不安を与えてしまうので、
管理職は早めにヒアリングなどで対処しましょう。
精神的・肉体的な負担が大きい
介護職員の退職理由4つ目は精神的・肉体的な負担が大きいことです。介護の仕事はイレギュラーなことが多いので、過度な負担がかかります。とくに入居者に何かあったときには、迅速な対応が必要です。不慣れな職員だと、思うように利用者の対応ができずに思い悩んだり、睡眠不足になったりします。上司は職員の様子をしっかり見て、ときにはカウンセリングすることが大切です。
介護職員が退職する理由は、精神的にも肉体的にも仕事の負担が大きいことです。「利用者に何か異変があったらどうしよう」という不安と常に向き合っている介護職員には、定期的な健康診断やカウンセリングをしてあげましょう。
施設と職員の方向性がずれている
介護職員の退職理由5つ目は、施設と自分の方向性が合っていないことです。介護職員は施設のルールに従わなければいけないため、自分の理想と施設の理想が合わないとストレスを感じます。たとえば、職員は社会に貢献したくて働いていても、施設側が親会社などの指示でビジネスライクな方針を取っている場合です。職員からすると、介護に対して持っていたイメージが崩れることになるので、退職につながりかねません。
介護職員が退職する理由に、施設と自分の考えが合っていないことがあります。方向性のすれ違いで退職するひとを減らすには、
採用の時点でしっかり施設のコンセプトを分かってもらうことが大切です。
介護職員処遇改善加算に関する疑問
ここでは介護職員処遇改善加算に関する疑問に答えていきます。疑問は以下の2つです。
- 退職するひとには加算額が支給されない?
- 介護職員処遇改善経過期初を見せてもらえない場合は?
上記2つの疑問に答えていきますので、気になる方は最後まで読んでください。
退職するひとには加算額が支給されない?
加算額は、職場に在籍していた期間分は支払われます。そのため、今月働いて来月退職する場合でも、今月の働いた分は国から事業所に加算されています。退職するからという理由で介護職員処遇改善加算がもらえないとしたら違反です。
心当たりがあるひとは、「介護職員処遇改善計画書」を事業所に見せてもらいましょう。「介護職員処遇改善計画書」には、加算額の支給に関するルールが記載してあります。
介護職員処遇改善計画書を見せてもらえない場合は?
たまに「介護職員処遇改善計画書は退職予定者には見せられない」と言われることがありますが、それは通用しません。処遇改善加算を導入するためには、介護職員処遇改善計画書を職員に周知する必要があります。
介護施設側から見せられないと言われたときは、「労働基準監督署」に相談するようにしましょう。あるいは都道府県の介護保険窓口に連絡するのもいいですよ。
施設としても違反を知られたくないはずなので、開示に応じてくれるでしょう。
介護職員処遇改善加算で退職者を減らせる
介護職員処遇改善加算によって退職者を減らせることについて解説してきました。処遇改善加算の目的は以下の通りです。
- 事業所の事務負担軽減
- 介護職員の給料アップ
- 介護職員の人材確保
- 職場環境の改善
介護施設の経営者にとって、職員の退職率が高いことは致命的な問題です。ぜひこの制度を利用して、職員が退職しない職場を作ってみてください。