「訪問介護がなくなる」と聞いて、不安な方もいらっしゃるでしょう。結論から申し上げますと、2023年9月の時点で訪問介護がなくなるという事実はありません。
【2024年度改正】訪問介護が崩壊?なくなると言われる理由
2023年9月時点で、訪問介護がなくなるという事実はありません。それではなぜ「訪問介護が崩壊する」「訪問介護がなくなる」と言われるのでしょうか。
ここでは、訪問介護がなくなると言われる理由を解説します。
ヘルパーの人手不足
訪問介護が崩壊すると言われる原因の一つが、ヘルパーの人手不足です。必要な訪問介護の量に対してヘルパーの数が不足しているため、提供できるサービスに制限が生じる懸念があります。
訪問介護員の不足は介護業界の中でも特に深刻で、全国の訪問介護事業所で人手不足を感じている事業所は約8割に及びます。また、厚生労働省が行った2022年度の調査では、訪問介護員の有効求人倍率は約15.5倍と施設の介護職員に比べて高い結果となりました。
さらに、訪問介護サービスの推移予測では、2040年度のサービス量は2020年度の33%増と見込まれています。そのため、訪問介護のサービスを利用したくてもできない高齢者や、ヘルパー不足で経営を維持できず廃業する事業所が出るのではと心配されています。
参照:
厚生労働省|訪問介護
介護労働安定センター|令和4年度「介護労働実態調査」結果の概要について
新しい複合型サービスの誕生
2024年度の介護報酬改定に向け、新しい複合型サービスの検討・整備が進めているのも訪問介護がなくなると言われる理由です。
新しい複合型サービスは、介護業界の人手不足を補い人材を有効活用しようとする取り組みで、通所事業所による訪問サービスの提供を中心にした内容です。利用者にとっても、訪問サービスと通所サービスを通じ、切れ目のない介護を受けるメリットがあると考えられています。
新しい複合型サービスの料金は定額になる予定で、サービスの利用回数が多い利用者にとっては費用の軽減につながる可能性があります。一方、ひと月の利用回数が少ない方では、通所介護と訪問介護を別々の料金で利用する方が安くなる場合もあるでしょう。
複合型サービスが創設されることにより、訪問介護事業所にも大きな影響がでると予想されています。働いている訪問介護事業所が新しい複合型サービスに移行した場合、訪問介護の提供だけではなく、デイサービスの業務も担う可能性があります。新しい複合型サービスで働く場合、ヘルパーには訪問介護とは違うスキルが要求されるため、戸惑う方もいるでしょう。
逆に、新しい複合型サービスに参入しない場合、訪問介護だけを提供する事業所としての営業になり、利用者減につながることも推測されます。利用者が減れば事業所の経営状態は悪化し、ヘルパーに還元できる資源も減少します。
新しい複合型サービスを選ぶヘルパーの出現や給料が下がるなどの不安から、ヘルパー不足がさらに進むのではという懸念が、訪問介護が崩壊すると言われる原因です。
参照:厚生労働省|新しい複合型サービス
要介護2以下の総合事業移行を検討中
要介護2以下の利用者のサービスを総合事業に移行することも検討されています。2024年の改正では見送りが決まったため、今のところは介護保険サービスとして提供できる状態です。ただし、2027年度の改定で移行が進むと考えられるため、今後の動向に注目が必要です。
総合事業に移行された場合、ボランティア等の活用も含めた支援となるほか、事業所の報酬が下がり経営悪化につながる可能性があります。提供するサービスの報酬が下がればヘルパーの給料にも影響し、ますますの人手不足が予測できるでしょう。そして、総合事業のサービスに人手が回らなくなり、利用者の受け入れをできないケースも生じると懸念されています。
訪問介護の生活援助とは|支援には介護の知識が必要!
要介護2以下のサービスを総合事業に移行しようとする動きの中で、訪問介護の生活援助が注目されています。生活援助をボランティアなどが提供することで、給付費の抑制につなげるという構想ですが、ヘルパーの生活援助は介護の知識が必要な仕事です。
誰でもできると思われがちな生活援助について、仕事内容を見ていきましょう。
生活援助の内容
訪問介護における生活援助のサービス内容は、掃除や洗濯、調理等に代表される家事の支援です。利用者本人や家族が行うことのできない日常生活に必要な家事を代行し、利用者の生活を支えます。
留意したいのは、行為の内容は家事の支援でも、ヘルパーには利用者一人ひとりの持病や薬、生活歴などをもとに、利用者の状態や生活の変化に気付く重要な役割がある点です。
ただ単に家事を行うのではなく、介護の専門知識や自立支援の観点から必要な支援を見極め、利用者のできることを奪わない介護を提供します。この点が、介護の資格と専門性を有するヘルパーが提供するサービス、「訪問介護の生活援助」の特徴です。
訪問介護の禁止行為
訪問介護では、ヘルパーができないことや禁止事項が存在します。
ヘルパーができない内容は以下の通りです。
- ケアプランに位置付けられていない内容
- 介護保険対象外の内容
- 医療行為にあたる内容
生活援助でできないことの具体例には、次の行為があります。
- 利用者本人の介護にあたらない行為
- 本人が使用していない部屋の掃除、家族が食べるための調理など
- 日常に必要な範囲を超える行為
- 窓ガラスの拭き掃除、大掃除、おせち料理の調理など
- ヘルパーが行わなくても日常生活に支障が生じない行為
- 草むしり、ペットの散歩など
ヘルパーは人気がない?人手不足の原因とは
ヘルパーの有効求人倍率は15.5倍と高く、他の介護サービスに比べても訪問介護の人手不足は顕著です。
ヘルパーの人数が特に不足している原因を2つご紹介します。
採用率と離職率のバランス
公益財団法人介護労働安定センターが行った令和4年度介護労働実態調査によると、ヘルパーの離職率は約14%でおおむね横ばいで推移しています。一方、採用率は令和4年度に増加が見られたものの、平成25年からの全体の動きとしては減少傾向にあります。
離職率がほぼ一定なのに対し採用率が下がっているため、ヘルパーの人手不足が拡大している状態です。さらに、人員が増えていないにもかかわらず、訪問介護の利用者やサービス量が増加していることもヘルパー不足が深刻化する要因となっています。
参照:介護労働安定センター|令和4年度「介護労働実態調査」結果の概要について
ヘルパーの高齢化
訪問介護員として長く働く方の中には、ヘルパー本人が高齢となったために退職するケースもあります。令和4年度の調査では、 訪問介護員のうち65歳以上の占める割合は約26%で、同様の調査を行った介護サービスの中で最も多い結果となりました。
介護業界の職員全体と比べて従業者の年齢が高い傾向にあり、ヘルパーの高齢化は訪問介護の人手不足に拍車をかけていると言えるでしょう。
参照:介護労働安定センター|令和4年度「介護労働実態調査」結果の概要について
訪問介護の大変なこと
次に、訪問介護の大変なことをご紹介します。ヘルパーを辞める理由とも重なるため、確認しておきましょう。
大変なこと・辞めた理由
ヘルパーとして働く上で大変なことは、負担が大きすぎると辞める理由につながる内容です。以下に挙げるものが、代表的な退職理由です。
- 一人で対応するプレッシャーが大きい
- 一人で利用者宅に訪問してサービスを行うため、支援の内容や緊急時の対応にプレッシャーを感じる方もいます。
- 移動が多さが負担になる
- サービス1件ごとに利用者宅への移動が伴うため、1か所で働きたい方や体力に自信のない方には負担になる場合があります。
- 給料が安く収入が不安定
- 時給で働く場合、ヘルパーの収入はサービスを行った時間数によって大きく左右されます。登録ヘルパーは1日のサービス件数によって収入が変動しやすく、不安定だと感じる方もいます。
キャンセルや仕事のない時間が発生する
訪問介護の特徴として、予定していたサービスにキャンセルが生じることがあります。キャンセルになった際の報酬の規定は事業所によって異なり、キャンセル手当などで一律で支給する事業所や、キャンセルになったタイミングに応じて時給が補償される場合などがあるでしょう。しかし、中にはキャンセルの場合に何も支給されない事業所も存在しています。これは、利用者に対するキャンセル料請求の規定が事業所ごとに異なるためです。
また、サービスとサービスの間には、空き時間が発生します。登録ヘルパーの場合、空き時間や次のサービスまでの待ち時間は基本的に給料の対象になりません。移動にかかる時間の取り扱いも事業所により違うため、収入が安定せず悩む方もいます。
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訪問介護の将来性
訪問介護は、人手不足や制度改正などのサービス提供に影響を及ぼす要因があったとしても、将来性はあると言えるでしょう。なぜなら、団塊の世代が75歳に達し、人口の4分の1が後期高齢者となる2025年に向けて、訪問介護の需要はますます高まるからです。
従来の訪問介護サービスと新しい複合型サービスは、どちらも利用者が増えヘルパーは引く手あまたになると予想されます。訪問介護やヘルパーの仕事をする際は、雇用形態や勤務するサービスを選んで、希望に合う働き方をすると良いでしょう。
【2024年度改定】訪問介護はなくならない!今後の動向に注目
2024年度の介護報酬改定では、直接訪問介護がなくなる内容は予定されていません。今後も訪問介護サービスの需要は高まり、仕事も増えるでしょう。ただし、このまま人員不足が広がり、増加するサービス量に対応できなくなった場合、サービス提供が制限されたり訪問介護事業所の閉鎖が起きたりする可能性は考えられます。2027年の改定も視野に入れ、動向に注目していくことが重要です。