訪問介護の開業に失敗する原因4選!収益や成功のポイントを解説

訪問介護の開業を成功させるためには、失敗の原因を理解し、それを排除する対策が重要です。

今回では、訪問介護の開業での失敗原因や成功のポイント、人員基準、収益について解説します。

この記事を読むことで、廃業率の高い訪問介護業界での成功の秘訣を掴む手助けとなるでしょう。

目次

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訪問介護の廃業率が高い理由|安易な開業に注意

東京商工リサーチの集計によると、2023年1〜8月における訪問介護事業者の倒産は40件以上で、2000年の調査開始の中で最多の結果となりました。コロナ禍でさらに深まったヘルパー不足や、物価高による燃料・衛生用品の費用増が大きく影響しています。また、昨年まで効果の見られたコロナ関連支援も効果が薄くなりました。 

一方、コロナ禍の影響だけでなく、訪問介護特有の原因で開業に失敗している事例も多く見られます。訪問介護は他の介護サービスに比べて開業の初期費用が少なく、安易に開業してしまうケースがあるためです。具体的な原因を次の項目で解説します。 

参考:東京商工リサーチ 

訪問介護の開業に失敗する原因4選!

訪問介護の開業に失敗する原因は4つあります。原因を理解し適切な対策をすることで、開業の成功に近づくことができます。さっそく見ていきましょう。

1.開業資金の不足

開業資金の不足は、訪問介護の開業を失敗する原因になります。 

訪問介護を開業するには、法人設立費をはじめとしたさまざまな資金が必要です。具体的には、指定申請費や物件取得費、設備・備品費、人件費や車両費などがあります。なかでも、訪問介護は慢性的な人材不足が続いているため、求人・採用の費用が予想以上に大きくなる場合があるでしょう。 

開業資金が多くかかってしまうことで、経営が安定するまでの運転資金が足りずに廃業に追い込まれる事例があるため、十分な注意が必要です。

介護報酬が事業所に入るのはサービス提供月の2か月後です。資金には十分な余裕をもたせてください。 

2.ヘルパーの人手不足

ヘルパーの人員を十分に確保できないことも開業失敗の原因です。ヘルパーの人手不足は介護業界の中でも特に深刻です。厚生労働省が行った2022年度の調査では、訪問介護員の有効求人倍率は約15.5倍と非常に高い結果になりました。

求人広告に多くの資金をつぎ込んでも、採用できるかは分からないのが現状です。訪問介護事業所のヘルパー獲得競争に勝ち、事業を黒字化できるほどの人数を集められなければ、サービス提供自体が行えなくなってしまいます。

参照:
厚生労働省|訪問介護
介護労働安定センター|令和4年度「介護労働実態調査」結果の概要について

ヘルパーの人手不足についてはこちらもご覧ください。

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3.利用者獲得力の不足

当然ながら、訪問介護を受ける利用者がいなくてはサービスの提供ができません。介護報酬を得るためには、ヘルパーの確保と共に、利用者の獲得も必要です。利用者とはケアマネージャーを通してつながるため、ケアマネージャーの信頼を得られる取り組みが重要になります。 

地域で競合となる既存事業所はケアマネージャーとの関わりが強いため、事業所を新規で立ち上げる際は存在を知ってもらうことからスタートします。また、訪問介護は新たに開業する事業所が多く、利用者獲得の競争も激しい現状です。

ケアマネージャーへの営業力の強化と、近隣や地域の住人との親交が大切です。 

4.法改正への対応不足

訪問介護では3年に一度、介護報酬改定が行われます。近年は、介護職員確保のための取り組みや、自立支援介護を評価する加算の新設が行われてきました。また、過去には要支援者に対する支援が国の制度から自治体が主体の総合事業へ移行されるなど、高齢者介護の構造自体が大きく変わる改定も実施されています。 

介護報酬は法改正のたびに変化があるため、介護報酬改定の動きに対応できない場合、経営が困難になる可能性があります。 

解決策|訪問介護開業の成功のポイント

次に、訪問介護の開業を成功させるポイントについて解説します。開業失敗原因への対策になるため確認してください。

助成金や補助金の利用

開業や運営の資金調達では、助成金や補助金を利用する方法があります。開業資金には、日本政策金融公庫の「新規開業資金」が活用できます。新規開業資金は、新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要な運転資金として、低金利で融資を受けられるものです。 

詳細は日本政策金融公庫のホームページでご確認ください。 

ICTの活用や資格取得のサポート

ヘルパーの人材確保には、労働環境を整えて長く働きやすい事業所にすることが大切です。訪問介護は人員不足により、一人のヘルパーにかかる業務の量が大きい現状があります。一人ひとりの業務負担を減らし、将来性を感じてもらえるような取り組みを行いましょう。 

具体的には、ICTの活用や資格取得へのサポートなどがあります。ICTを活用することで、介護記録や報告書の作成、ヘルパー間の情報共有の手間を減らし、効率化できます。事務作業にかかる残業が少なくなれば、家庭との両立がしやすくなるため離職防止にもつながります。訪問介護はスタッフの年齢層が高い傾向にあり、家庭を持つ方が多いサービスのため、家庭との両立は大切でしょう。 

資格取得はヘルパーのキャリアアップになると同時に、事業所の収益アップにもつながります。特定事業所加算取得の要件の一つに資格要件があるためです。

介護福祉士の在籍は事業所の信用にもつながるポイントです!

ケアマネ営業・地域との関わり強化

介護保険サービスの利用者は、ケアマネージャーを通じて獲得する場合がほとんどです。そのため、ケアマネージャーへの営業は事業所運営に欠かせない業務になります。開業時の挨拶の他にも、定期的に訪問して事業所の存在と顔をおぼえてもらってください。 

介護保険サービスでは、月に1回以上はケアマネを訪問し、接触する機会を設けている事業所が多いです。

利用実績や利用状況の報告タイミングに合わせて、スケジュールに組み込むことをおすすめします。

その際、事業所の特色や強みをアピールできる資料、月ごとの取り組みや利用者受け入れ可能な時間枠の伝達ツールを持参するとよいでしょう。 

なお、月初は給付管理の業務が集中するため、ケアマネージャーが特に多忙な時期です。じっくり話をしたい場合は、この期間を避けて訪問すると、ケアマネージャも時間を取りやすいでしょう。 

また、稀に訪問介護事業所に直接サービス利用の申し込みに訪れる方や、事業所を指名して利用する方もいます。そのため、近隣住民や地域の住人と良い関係を作るのも大切です。近隣との関係が良好なら、トラブルが起きにくいメリットもあります。 

介護業界の動向を学ぶ

介護業界の流れを掴むには、介護報酬改定や支援金など、介護保険サービスにかかわる情報を収集、分析・行動することが重要です。 

厚生労働省や自治体からの通知やホームページの確認の他、同業者からの情報も活用できます。地域で行われるイベントや集会に参加して、人脈作りをするのも有効な方法でしょう。

介護技術や福祉用具の進化、働き方に関する時代の流れなどにも関心を持ち、常に学び続ける必要があります。 

訪問介護の開業は一人でできない|人員基準に注意

訪問介護の開業は一人ではできません。 以下のように必要な人員の基準が定められているためです。 

  • 訪問介護員等 :常勤換算方法で2.5人以上 
  • サービス提供責任者:利用者40人に対して1人以上 
  • 管理者:1人(サービス提供責任者と兼務可能) 

訪問介護員は、身体介護のサービスを行う場合、介護職員初任者研修や介護福祉士などの資格が必要です。サービス提供責任者は常勤の訪問介護員の中から定めることができます。

管理者はサービス提供責任者や訪問介護員との兼務が可能ですが、管理業務を行う時間を確保する必要があるため、時間のバランスに注意してください。 

参照: 
厚生労働省|指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 

訪問介護の開業は儲かる?訪問介護の収益

訪問介護を開業しても、どの程度儲かるのかは知っておきたいところです。厚生労働省が行った調査によると、令和3年度決算の訪問介護の平均収益は以下のとおりです。

  • 平均収益:約300万円(一月あたり)
  • 収支差率:約6%

訪問介護の収益や調査結果の詳細は以下をご覧ください。
参照:厚生労働省|令和4年度介護事業経営概況調査結果

訪問介護の安易な開業は失敗のもと!しっかり準備して成功しよう

訪問介護は介護サービスの中でも少ない初期費用で開業可能なため、新規参入する事業所が多い特徴があります。しかし、資金不足やヘルパー不足、利用者獲得の失敗などで廃業する事例も見られます。

開業を成功させるためには、十分な開業資金の用意とヘルパーの求人、ケアマネ営業が重要です。また、介護報酬改定の流れを読んだ対策をしていくことも大切でしょう。しっかり準備して訪問介護の開業を成功させてください。

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この記事を書いた人

Iharaのアバター Ihara 運営者

15社以上のオウンドメディア・コンテンツの企画・戦略設計の経験を持つマーケティングアナリスト。大学在籍時に中小企業診断士一次試験突破。ASO・SEOを中心に活動しており、アプリ・インフルエンサーマーケティングにも精通がある。
介護・看護職のための単発バイトメディア「カイテク・メディア」の編集長。
介護・看護職のよりどころ「ケアマガジン」の運営者。

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