「重度訪問介護は何をするの?」とお考えの方も多いでしょう。
重度訪問介護は、重度の障害を抱える方の生活を支援するやりがいのある仕事です。しかし、詳しい内容はわかりにくいかもしれません。
重度訪問介護とは|サービス内容と対象者を解説!
ここでは、重度訪問介護の内容と対象となる利用者について具体的に解説いたします。
サービス内容
重度訪問介護の主なサービス内容は以下のとおりです。
身体介護
入浴、排泄、食事、着替えなど
家事援助
調理、洗濯、掃除、生活に必要な買い物など
移動介護
外出時の移動中の介護
その他
- 生活に関する相談や助言
- さまざまな事態への見守り
- 入院中の病院などでのコミュニケーション支援
常に介護が必要な方への総合的な支援を前提としており、ヘルパーは訪問中に生じる困りごとに柔軟に対応いたします。基本的には長時間のサービスであり、生活全般にわたる援助や日常生活での介護事態への見守りが含まれるのが特徴です。
参照:
厚生労働省|03_資料3 重度訪問介護に係る報酬・基準について
厚生労働省|障害福祉サービスについて
対象者
対象となるのは、重度の肢体不自由者や重度の知的障がい者、精神障がい者で、常に介護を必要とする方です。
具体的には、障害支援区分が区分4以上で、以下のいずれかに該当する方です。
- 二肢以上に麻痺等があり、かつ、障害支援区分の認定調査項目の中で、歩行、移乗、排尿、排便のすべてが「支援が不要」以外に認定されている方。
- 障害支援区分の認定調査項目の中で、行動関連項目等(12項目)の合計点数が10点以上の方。
※病院などに入院または入所中の場合、区分6で入院または入所前から重度訪問介護を利用していた方。
参照:厚生労働省|障害福祉サービスについて
訪問介護や居宅介護との違いは?
重度訪問介護と混同しやすいサービスに、訪問介護と居宅介護があります。
ここでは、それぞれのサービスの違いを解説します。
訪問介護との違い
重度訪問介護と訪問介護は、規定されている法律や対象者が異なります。
重度訪問介護は障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスであり、一方、訪問介護は介護保険法に基づく介護保険制度のサービスです。そのため、訪問介護の利用者は、40歳以上で要介護認定を受けている方となります。
介護保険制度の詳細は、以下よりご覧ください。
厚生労働省|介護保険制度について
居宅介護との違い
重度訪問介護と居宅介護は、どちらも障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスですが、対象者や提供時間、内容に違いがございます。
対象者
重度訪問介護は、障害支援区分4以上で要件を満たす方が対象です。一方、居宅介護の対象は、障害支援区分1以上の方です。
提供時間
重度訪問介護は、利用者宅で長時間滞在して支援を行う形態です。対照的に、居宅介護は短時間でサービスを提供する形態となります。具体的には、居宅介護は最大3時間(身体介護の場合)、重度訪問介護は1日3時間以上となります。
内容
重度訪問介護では、介護行為がない時間の見守りもサービス内容に含まれます。利用者宅での長時間滞在中に、介護が必要な事態に備えるための見守りも、その包括的なサービスの一部として重要です。
参照:
厚生労働省|03_資料3 重度訪問介護に係る報酬・基準について
厚生労働省|障害福祉サービスについて
仕事できついと感じること5選
重度訪問介護は、重度の障害を持つ方々を対象としたサービスです。このサービスを提供する際にヘルパーが感じる負担や困難な点を5つご紹介します。
1長時間勤務や夜勤がつらい
重度訪問介護は基本的に長時間の支援を前提としたサービスです。そのため、1回あたりの訪問時間が長くなり、長時間連続での勤務が辛いと感じるヘルパーもいます。
また、24時間体制でサービスを提供する利用者の場合、8時間の訪問を3交代で行うケースが多く見られます。その結果、夜勤や早朝の訪問を担当することもあります。
長時間の連続勤務や夜勤、不規則な出勤時間が多くなることから、体力に自信のないヘルパーにとっては負担が大きくなります。特に子どもを持つ家庭の場合、家族との生活サイクルが合わなくなるデメリットも考えられます。
2.コミュニケーションが難しい
重度の障害を持つ方が対象のため、対応が難しい場面もあります。利用者は身体的・精神的なストレスを感じやすい傾向にあり、言語障害を持つ方もいます。そのため、利用者の細かな要望をヘルパーが汲み取ることが求められます。意思疎通の難しさや利用者の反応が理解できない場合、相手を怒らせたと感じるヘルパーもいるでしょう。
3.高い介護技術レベルが必要
重度訪問介護の利用者は、基本的な介護技術に加えて、それぞれの状態に合わせた対応が必要です。特に、内臓に疾患のある方の入浴介助では、利用者に対する繊細な介護、器具の取り扱い、周囲の安全確保など、複数の配慮を同時に行う技術が求められます。その難易度の高さから、自信を失ってしまうケースも考えられます。
4.医療的ケアをおこなう負担
重度訪問介護の利用者には、喀痰吸引や経管栄養が必要な方が多く、ミスをすると命に関わることもあります。そのため、ヘルパーは医療的ケアの技術や疾患に関する知識を正確に身につける必要があります。常時、利用者の急変に備える必要があることもストレスの原因となります。基本的に一人での訪問となるため、精神的な負担が増加します。
5.給料が安い
令和4年度の重度訪問介護で働く常勤・非常勤の給与目安は以下の通りです。
・常勤:約373万円(手当などを含む)
・非常勤:約127万円(手当などを含む)
参考:厚生労働省|令和4年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査結果
重度訪問介護は、障害福祉サービスの一部として介護給付を受けるもので、サービスの単価は国で定められています。そのため、ヘルパーが長時間勤務しても、事業所の収益は固定されています。このため、ヘルパーの給料が安いと感じることも、重度訪問介護の厳しい点と言えるでしょう。
重度訪問介護のやりがい
先ほどまで、きついと感じることをご紹介しましたが、重度訪問介護には多くのやりがいもあります。その中で代表的なものは、一人ひとりに丁寧に深く関われる点です。
重度訪問介護は、ヘルパーの訪問時間が長いサービスです。また、利用者にとって1日で関わる相手がヘルパーのみという場合もあるでしょう。生活の場であるご自宅で長時間、二人きりで接するため、利用者との関わりは深まります。
高い介護技術が求められる困難なケースが多いからこそ、利用者が満足する支援を行えたときの喜びは大きく、生活の一端を担える充実感が得られるでしょう。
重度訪問介護に必要な資格
重度訪問介護の仕事をするには、対象となる介護の資格を持っているか、重度訪問介護従業者養成研修の修了が要件となっています。それぞれ見ていきましょう。
介護職員初任者研修などの介護の資格
介護の資格を持っている方は重度訪問介護に従事できます。対象となる資格は以下のとおりです。
- 介護職員初任者研修
- 実務者研修
- 介護福祉士
詳しくは、各都道府県のホームページを確認してください。
重度訪問介護従事者養成研修
介護の資格がない場合、重度訪問介護従業者養成研修を修了することで、重度訪問介護の仕事に従事できます。
研修は、基礎課程・追加課程・統合課程に分かれており、対応できる業務に差があります。研修の種類と対応範囲は以下のとおりです。
- 基礎課程:障害支援区分4〜5の利用者へのサービス提供
- 追加課程:障害支援区分6の利用者へのサービス提供
- 統合課程:障害支援区分4〜6の利用者に加え、喀痰吸引などの医療ケアが可能
※実施している研修過程は都道府県によって異なります。詳細は、各都道府県や実施団体のホームページで確認してください。
一人ひとりに寄り添う重度訪問介護でやりがいを感じよう!
重度訪問介護は、利用者の状態を理解して対応する必要がありますが、一人ひとりに寄り添い深く関わるサービスとして提供できます。利用者が満足したときや感謝の言葉をかけられたとき、大きな充実感を得ることができます。
専門性が求められる仕事であるからこそ、そのやりがいを感じて、活き活きと働きましょう。