高齢者の生活を24時間支えるサービスの中に、定期巡回(定期巡回・随時対応型訪問介護看護)があります。これは訪問サービスの一つですが、利用者の自宅での支援を行う訪問介護とは何が異なるのか、初めて聞く方にはわかりにくいかもしれません。
定期巡回とは?|定期巡回・随時対応型訪問介護看護
定期巡回とは、訪問介護と訪問看護が連携して定期巡回と随時対応を行い、高齢者の生活を24時間支える介護サービスです。2012年にスタートした地域密着型のサービスで、正式な名称は定期巡回・随時対応型訪問介護看護になります。
【定期巡回・随時対応型訪問介護看護の特徴】
- 日中・夜間を通じた24時間体制のサービス提供
- 訪問介護と訪問看護を一体的に提供
- 利用者からの通報に随時応対、必要時の随時訪問を提供
参照:厚生労働省|定期巡回・随時対応型訪問介護看護及び夜間対応型訪問介護
定期巡回と訪問介護の違いを5つ解説!
定期巡回と訪問介護は、どちらも利用者の居宅で介護を行う訪問サービスですが、異なる部分もあります。
ここでは、定期巡回と訪問介護の違いを5つ解説します。
1.利用条件・対象者の違い
定期巡回(定期巡回・随時対応型訪問介護看護)
利用者の住民票が、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の事業所と同じ市区町村にあることが利用条件の一つになっています。
訪問介護
利用者の生活する居宅が訪問介護事業所のサービス提供エリアにあれば、利用者の住民票がどこにあっても利用できます。
2.仕事内容の違い
定期巡回も訪問介護も、自宅に訪問することや、提供する身体介護・生活援助の内容は共通です。仕事内容の主な違いと共通点は以下の通りです。
◆仕事内容の主な違い
- 電話やICT機器等による随時応対
- 定期巡回:あり
- 訪問介護:なし
- 緊急時の対応
- 定期巡回:あり
- 訪問介護:なし(条件により可能な場合もある)
- 訪問看護の提供
- 定期巡回:あり
- 訪問介護:なし
- 見守り、安否確認
- 定期巡回:あり
- 訪問介護:単なる見守り、安否確認は対象外
- 通院等乗降介助
- 定期巡回:なし
- 訪問介護:あり
◆仕事内容で共通の行為
- 身体介護:排泄、入浴、更衣、食事など
- 生活援助:調理、洗濯、掃除、買い物代行など
参照:厚生労働省|24時間対応の定期巡回・随時対応サービスの創設
3.提供時間の違い
定期巡回と訪問介護では、サービスの提供時間にも大きな違いがあります。
定期巡回
24時間365日体制でサービス提供を行います。 訪問時間の縛りはなく、臨機応変な対応が可能な点と短時間のサービスで1日に複数回訪問できる点が特徴です。 サービスには、定期巡回等計画書にもとづく訪問と、必要な場合の随時応対・随時訪問が含まれます。
訪問介護
事業所の営業時間内(サービス提供時間内)でサービス提供を行います。営業時間の設定は事業所により異なりますが、一般的には7:30~19:30を中心とした日中の時間帯です。 ケアプランに沿ったサービス提供を行い、決められた内容と時間で訪問します。利用者に必要な内容や行為をもとに、「排泄介助で30分」「掃除と洗濯で60分」など、サービス提供の時間が決まっているのが特徴です。
4.2時間ルールの違い
定期巡回には、訪問介護にある「2時間ルール」は存在しません。定期巡回では、時間の縛りや制限を設けずに、随時臨機応変な対応を行うサービスとなっているためです。
2時間ルールとは
このルールがあることで、特例の場合を除き、訪問介護のサービスを1日に複数回算定する場合、訪問の間隔を2時間以上空ける必要があります。
5.料金・単位の違い
定期巡回
定期巡回は要介護度によって費用が決まる定額のサービスです。内容や回数による増減はなく、早朝や夜間の割増もありません。基本料金は、事業所が訪問看護一体型である場合と訪問看護連携型である場合、さらに、訪問看護を利用する場合としない場合に分かれています。
以下に、定期巡回の基本料金(基本単位数)の例をご紹介します。
◆訪問看護一体型の事業所で、介護と看護を利用した場合※
- 要介護1:8,312円(8,312単位)
- 要介護2:12,985円 (12,985単位)
- 要介護3:19,821円(19,821単位)
- 要介護4:24,434円(24,434単位)
- 要介護5:29,601円(29,601単位)
※自己負担割合1割、1単位=10円で計算
※実際の料金は、加算減算の単位数、利用者負担の割合、お住まいの地域区分によって変わります
訪問介護
訪問介護は一回のサービスごとに利用料が発生し、サービス内容と時間、回数によって費用が積みあがるシステムです。また、早朝と夜間の割増も発生するため、月の利用状況によって金額の変動があるのが定期巡回と異なる点です。
定期巡回と訪問介護の料金詳細は、以下サイトでご覧下さい。
参照:
厚生労働省|定期巡回・随時対応型訪問介護看護及び夜間対応型訪問介護
厚生労働省|訪問介護
定期巡回と訪問介護・訪問看護は併用できない
定期巡回のサービスには、訪問介護にあたる定期巡回、緊急時にオペレーター対応や訪問を行う随時訪問、看護師が連携してケアを行う訪問看護の機能が含まれています。そのため、内容が重複する以下のサービスは併用不可となっています。必要な支援を見極めたサービス選択が重要といえるでしょう。
【定期巡回と併用できないサービス】
- 訪問介護(通院等乗降介助を除く)
- 訪問看護(連携型利用時を除く)
- 夜間対応型訪問介護
参照:厚生労働省|24時間対応の定期巡回・随時対応サービスの創設
定期巡回のデメリット
つぎに、定期巡回を利用する際のデメリットを3つ紹介します。サービスの利用状況によっては、他のサービスを選択した方がよい場合もあるので確認しましょう。
他の訪問系サービスとの併用ができない
定期巡回を利用する場合、併用できないサービスがあるのがデメリットです。前述した通り、訪問介護や訪問看護等のサービスを同時に利用することはできないため、注意が必要です。
訪問介護や訪問看護から切り替える場合のスタッフが変更
訪問介護や訪問看護を利用している方が定期巡回に切り替える場合、事業所の変更が伴います。それまで利用していた訪問介護・訪問看護の事業所から、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の事業所へ変更されるため、スタッフも新たな事業所の人員に変わります。
利用回数が少ない場合は割高になる可能性がある
定期巡回は、介護度ごとに一月当たりの費用が決められている、包括料金のサービスです。一月の利用回数や時間が少ない場合、利用状況に応じた費用を支払う訪問介護や訪問看護に比べて割高になる可能性があります。
利用者の状態に改善が見られた場合や、家族の支援状況に変化があった場合などは、利用するサービスを見直すのもよいでしょう。
定期巡回ヘルパーの働き方|特徴とデメリット
24時間対応する定期巡回のヘルパーは、訪問介護ヘルパーとは働き方にも違いがあります。定期巡回のヘルパーについて、働き方の特徴と訪問介護ヘルパーの違い、デメリットを紹介します。
働き方の特徴と訪問介護ヘルパーとの違い
働き方の特徴
巡回は24時間体制でサービスを提供するため、早朝勤務や夜勤があるのが大きな特徴です。
早朝・夜勤は賃金の割増があるため、より多くの収入を得たい方には適しているでしょう。
一般的には交代でのシフト勤務が多いですが、事業所の中には日勤や夜勤専従の勤務スタイルを採用している場合もあります。
訪問介護ヘルパーとの違い
居宅介護では夜勤を含めた複数の勤務時間があるのに対し、訪問介護では日中中心の日勤となる点が異なります。訪問介護は事業所ごとに営業時間(サービス提供時間帯)の定めがあり、ヘルパーのサービスは事業所のサービス提供時間帯の中でしか行えません。そのため、訪問介護のヘルパーは、事業所が営業している日中メインの勤務となります。
働き方のデメリット
定期巡回で働くデメリットは、以下の3点です。
早朝・夜間の勤務がある
定期巡回のサービスは、24時間365日の体制で行われます。そのため、夜勤を担当する場合もあるでしょう。
緊急の対応がある
定期巡回には、利用者からの通報に対する応対や、必要と判断した際の随時訪問が含まれています。緊急対応も想定したサービスの種類であるため、一定の内容でサービス提供したい方や、臨機応変な対応にプレッシャーを感じる方には負担が大きい場合があります。
利用者の相談への応対と判断の必要がある
定期巡回では、24時間体制で利用者からの通報や相談に対応します。通報や相談を受けるオペレーターとして勤務する際は、利用者の話を聞き取り、緊急に訪問する必要があるかを判断する役割が生じます。 特に、夜間の通報は不安の訴えによる相談になりやすいため、利用者の気持ちに寄り添った傾聴が大切です。
定期巡回と訪問介護の違いを理解して自分に合う働き方を選ぼう!
定期巡回と訪問介護の違いには、対象者やサービスの提供体制、料金形態などがあります。また、ヘルパーの働き方も異なり、定期巡回では早朝勤務や夜勤を含むシフト制、訪問介護は日中中心の勤務になるのが特徴です。それぞれの違いを理解して、あなたに合った働き方を選びましょう。