「居宅介護と訪問介護は何が違うの?」と疑問に思う方も多いでしょう。居宅介護と訪問介護は名称が似ているのですが、根拠となる法律や制度の枠組みが異なるサービスです。
居宅介護とは|障害福祉の訪問サービス
居宅介護とは、障害者の在宅生活を支援するために、訪問介護員が利用者の居宅を訪問して身体介護や家事援助、生活に関する相談などを行う障害福祉サービスです。
訪問介護とは|介護保険の訪問サービス
訪問介護とは、高齢者の自立した日常生活を支えるために、訪問介護員が利用者の居宅を訪問して身体介護や生活援助などの必要な支援をおこなう介護サービスです。
参照:厚生労働省|どんなサービスがあるの? – 訪問介護(ホームヘルプ)
居宅介護と訪問介護の3つの違いをわかりやすく解説!
居宅介護と訪問介護は、どちらも訪問介護員が利用者の居宅で支援を行う訪問サービスという点が共通しています。次に、居宅介護と訪問介護の違いを4つの項目に分けてわかりやすく解説します。
1.制度の違い
居宅介護と訪問介護の大きな違いは、根拠となる法律や制度の枠組みが異なる点です。
- 居宅介護:障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス
- 訪問介護:介護保険法の介護保険制度による介護サービス
障害福祉サービスと介護サービスは、いずれも国が行う福祉・介護分野のサービスです。
福祉・介護の分野は、内容ごとに障害者福祉、介護・高齢者福祉、生活保護・福祉一般の3つにわかれ、更に細分化されています。
障害福祉サービスである居宅介護は、障害者福祉に含まれるサービスです。障害者福祉は、障がいのある方が地域の一員としてともに暮らし生きるための政策で、障害者福祉のサービスや施策を推進しています。
一方、介護保険サービスの訪問介護は、介護・高齢者福祉に属しています。介護・高齢者福祉は、高齢者や特定疾患が原因で介護が必要になった方が、尊厳を持ち住み慣れた場所で自立した生活をするための政策です。
このように、居宅介護と訪問介護では、政策の枠組み自体に違いがあるサービスとなっています。 参照:厚生労働省|福祉・介護
2.対象者の違い
居宅介護と訪問介護はサービスの属する枠組みが異なるため、利用できる対象者にも違いがあります。それぞれ対象となる方は、以下の通りです。
居宅介護
18歳以上の身体障害・精神障害・知的障害で障害支援区分1以上と認定された方、及び18歳未満でこれに相当する障害児
ただし、通院等介助(身体介護を伴う場合)を算定する場合は、次のいずれにも該当する方
(1)障害支援区分2以上
(2)障害支援区分の認定調査項目のうち、次のいずれか一つ以上に認定されている
・歩行:「全面的な支援が必要」
・移乗・移動:「見守り等の支援が必要」、「部分的な支援が必要」、「全面的な支援が必要」
・排尿・排便:「部分的な支援が必要」、「全面的な支援が必要」
訪問介護
65歳以上の要介護認定を受けた方、または40歳以上で規定の特定疾患により要介護認定を受けた方
参照:
厚生労働省|障害福祉サービスについて
厚生労働省|介護保険制度について
3.サービス内容の違い
居宅介護と訪問介護は、どちらも利用者の日常生活を支えるために排泄・入浴・食事等の介護、掃除・洗濯・調理等の家事などを提供する訪問サービスです。
異なるのは、「移動や外出に関わる支援の有無」です。
買い物を行う場合、訪問介護では生活援助による買い物代行に加え、身体介護での買い物同行が含まれています。買い物同行では、利用者はヘルパーの介助を受けながら一緒に店に行き、商品を自分で選んで購入できます。
居宅介護では、家事援助の買い物代行のみ対象です。障害者の移動に関する支援を行うには、同行援護や行動援護といった別のサービスを利用する方法となり、個別での認定が必要です。
居宅介護と訪問介護の代表的なサービスは以下の通りです。
居宅介護
- 身体介護:排泄、入浴、食事など
- 家事援助:掃除、洗濯、調理、ごみ捨て、買い物代行など
- その他:生活等に関する相談や助言、生活全般にわたる援助
訪問介護
- 身体介護:排泄、入浴、食事、買い物同行など
- 生活援助:掃除、洗濯、調理、ごみ捨て、買い物代行など
- 通院等乗降介助:受診に必要な移動の介助
参照:
厚生労働省|障害福祉サービスについて
厚生労働省|老振発0330第2号「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」の一部改正について
その他の訪問に関わるサービス
居宅介護と訪問介護以外にも、在宅で利用できる訪問サービスがあります。名称が似ていて混同しやすいですが、それぞれ異なるサービスになります。代表的なものを3つご紹介しますので見ていきましょう。
重度訪問介護とは
利用の対象となるのは、障害支援区分4以上で定められた要件を満たす方になります。
ヘルパーが利用者宅に長時間滞在して、身体介護、家事援助、移動介護を行う他、日常生活で起こる介護が必要な事態に対応するための見守りも含まれているのが特徴です。
参照:
厚生労働省|03_資料3 重度訪問介護に係る報酬・基準について
厚生労働省|障害福祉サービスについて
訪問看護とは
利用者の心身機能の維持や回復などを目的として、主治医の指示に基づいた療養上のサービスを行います。
参照:厚生労働省|どんなサービスがあるの? – 訪問看護
居宅介護支援とは
支援の行為を直接提供するものではないですが、必要な介護保険サービスを利用するための計画を立てる大きな役割があります。
参照:厚生労働省|どんなサービスがあるの? – 居宅介護支援
居宅介護と訪問介護の併用は原則できない
居宅介護と訪問介護は、原則として併用することができません。障害福祉サービスの利用者が65歳で介護保険の対象になった場合、介護保険サービスが優先されるのが基本のためです。
サービスは居宅介護から訪問介護に移行され、居宅介護支援で作成したケアプランに応じて介護保険サービス提供が行われます。ただし、介護保険で対応できないような障害福祉サービス固有の内容の場合、状況に応じて併用することができます。
訪問介護と居宅介護の計画の詳細は地域によって異なるため、市区町村にご確認ください。
居宅介護と訪問介護の違いを理解して、最適なサービスを提供しよう!
居宅介護と訪問介護は、どちらも訪問介護員が利用者の居宅を訪問してサービス提供を行う訪問サービスですが、政策の枠組みが異なります。
- 居宅介護:障がい者を対象とした障害福祉サービス
- 訪問介護:高齢者を対象とした介護保険サービス
居宅介護と訪問介護は基本的に併用できないため、対象となるサービスの確認が必要です。
また、ヘルパーとして働くときも、携わりたいサービスの事業所を選ぶのがポイントです。.居宅介護と訪問介護の違いを理解して、最適なサービスを提供しましょう。