従来型の特別養護老人ホーム(特養)は、在宅での生活が困難になった介護度の高い高齢者を対象とした介護保険施設です。しかし、働いている方の中には「従来型特養の仕事がきつい」という声が上がっています。
特別養護老人ホームの施設基準
特別養護老人ホームは、特養と略して呼ばれることが多く、要介護高齢者のための生活施設として、入浴や食事などの介護、日常や療養上の世話、機能訓練や健康管理を行う施設です。施設の構造によっては、従来型とユニット型の2つに大別され、それぞれにおいて人員配置基準が異なります。
以下では、これら2つの施設について詳しく解説いたします。
「従来型」「ユニット型」を比較
従来型とユニット型では利用者が生活をする居室構造がおおきく異なります。それぞれの特徴や人員配置基準をご紹介します。
【従来型特養】
- 1つの部屋に4人程度が入居し共同で生活する多床室スタイルの施設構造
- 従来からある施設形態で運営経験が豊富
- 人員配置基準|入所者3人に対して1人以上の介護職員または看護職員を配置
【ユニット型特養】
- 入居者は個室で生活され、10部屋程度を一つのユニット(グループ)を構成する施設構造
- 福祉先進国スウェーデンのケアスタイルを取り入れており、2001年以降に新設された特養はユニット型が主流
人員配置基準
- 昼間は1ユニットごとに常時1人以上の介護職員または看護職員を配置
- 夜間は2ユニットごとに1人以上の介護職員または看護職員を配置
- ユニットごとに常勤のユニットリーダーを配置
従来型特養の業務シフトとは?
相部屋タイプの従来型特養では、人員配置基準はユニット型に比べて緩和されていますが、実際に働く方からは大変だとの声をお聞きします。
そこで、具体的なイメージが湧くように、従来型特養で働く職員のスケジュールを日勤と夜勤に分けてご紹介いたします。
日勤のスケジュール
8:45~9:00 出勤、業務の引継ぎ
9:30 入浴介助、排泄介助
11:30 昼食準備、服薬準備
12:00 昼食介助、服薬介助
12:30 昼食下膳、片付け、口腔ケア(歯磨き)
13:00 休憩
14:00 レクレーション
15:00 おやつ
16:00 排泄介助、介護記録業務
17:00 夕食準備、服薬準備、申し送り
17:30 食事介助、服薬介助
18:00 退勤
夜勤のスケジュール
17:00 出勤、業務の引継ぎ
17:00 夕食準備、服薬準備
17:30 食事介助、服薬介助
18:00 夕食下膳、片付け、口腔ケア(歯磨き)
19:00 トイレ誘導、おむつ交換
21:00 消灯時間、就寝確認
22:00~5:00 介護記録業務、巡回 休憩(仮眠)
5:30 起床介助、更衣介助、排泄介助
7:00 朝食準備、服薬準備
7:30 食事介助、服薬介助
8:00 朝食下膳、口腔ケア(歯磨き)、介護記録業務
8:45~9:00 申し送り、退勤
主な業務内容
「従来型」と「ユニット型」は、施設構造の違いはありますが、業務内容はおおむね共通しています。
主な仕事内容は以下になります。
- 身体介護
- 食事介助、入浴介助、排泄介助、移動介助などの身体に直接触れておこなうサービス
- 生活援助
- シーツ交換や病院受診の付き添い、食事準備などの生活を送るために必要な援助
- 行事やレクリエーションの企画、運営
- レクレーション:体操、ゲーム、折り紙、カラオケ、散歩など
- 行事:節分、夏祭り、クリスマスなど
- 家族対応
- 面会や家族へのケアプラン説明、近況報告
- 健康管理
- バイタル、食事摂取量、排泄などの確認など
従来型特養の待遇とは?
これまで施設の概要やスケジュールについて説明してきましたが、従来型特養の平均給与や残業についても厚生労働省や介護労働安定センターの調査に基づき解説します。
介護業界では比較的高い平均給与
介護業界の施設は数多く存在しますが、特養の平均給与は業界内でトップクラスとなっているようです。その理由として、介護度が高い利用者に対して専門的なスキルが求められることや、社会福祉法人や地方公共団体などの公的機関が運営しているため、民間の施設よりも安定していると考えられます。
介護業界の平均年収を常勤者で比較すると、以下のようになっています。
- 特別養護老人ホームの平均月収:348,040円(年収換算で417万円)
- 全介護職員の平均月収:317,540円(年収換算で381万円)
36万円の差が見られるため、給与を重視する方には特養がおすすめです。
残業時間や有給取得率
介護業界には残業が多い、有給休暇が取得しにくいというイメージを持つ方も多いでしょう。こちらでは介護労働安定センターの調査に基づいて解説します。
無期雇用職員における1週間の残業時間数で、「残業なし」と回答した事業所は55.0%。さらに、「10時間未満」と回答した事業所を加えると、9割を占めています。全体的に見ると、平均残業時間は1週間に1.7時間です。また、有給休暇の平均取得日数は7.8日となっています。
皆さんが持っているイメージよりも働きやすい環境が整っているのではないでしょうか。
参考:労働者調査「介護労働者の就業実態と就業意識調査結果報告書」(pdf)
従来型特養がきついと言われる理由を紹介
介護業界の悩みや仕事を辞める理由として、「人間関係の問題」「人手不足」「仕事内容に見合わない賃金」といった意見が多いです。ここでは、特に人手不足や仕事内容に焦点を当てて詳しく解説します。
入所待ちの需要に人手不足
特別養護老人ホームは、リーズナブルな費用での入居が可能なため、多くの方に人気があり、入所待ちとなる施設も多いようです。しかし、介護業界全体での人手不足は深刻な問題であり、特養もその例外ではありません。調査結果によれば、「介護職員は充足しているか」という質問に対し、68.6%の施設が「職員が不足している」と回答しています。
人手不足は業務の負担増として現れ、特養の仕事が厳しいと感じられる要因の一つとなっています。
参考:2022年度特別養護老人ホームの人材確保及び処遇改善に関する調査(PDF)
要介護度が高い利用者への対応
平成27年4月より、原則として特養への新規入所者は要介護3以上の高齢者に限られています。
一般的に、介護レベルが上昇すると、介護の必要度も高まります。要介護3以上となると、日常生活の多くの面で介護職員のサポートが必要となり、多岐にわたる業務対応や状況の変化に柔軟に対応することが求められるため、学ぶことが多い環境と言えます。
看取り介護による精神的負担
特養は、最期までの「終の棲家」として利用されています。
多くの特養で看取りが行われているため、新人の方には利用者の最期に深く関わる看取りの精神的負担が重く感じられるかもしれません。
参考:介護老人福祉施設における医療的ケアの現状についての調査研究事業(結果概要)(案)
きついと感じる従来型特養の5つの対処法
従来型特養は人手不足や介護度の高い利用者への介護サービス提供が求められ、業務の過酷さが増しています。しかし、この記事ではその対処法を5つご紹介します。
働き方を見直す
働いている方の中で業務がきついと感じている方は、働き方の見直しを推奨します。具体的には、特に大変と感じる夜勤のシフトを減らし、人員が多い昼間の勤務を選択するのも一つの方法です。これにより、生活リズムが安定し、精神的負担も減るでしょう。
自分の働き方について考えることが、働き方を見直すきっかけとなるかもしれません。
コミュニケーションを深め他職種連携で乗り切る
多職種連携や積極的なコミュニケーションを取ることで、利用者の情報共有がしやすくなり、業務の効率も向上します。
例えば、食事については栄養士、家族とのコミュニケーションはケアマネージャーに相談するなど、専門性の高い職種の意見を参考に、利用者のケアに反映させることが、業務の改善につながるでしょう。
上司や同僚に相談する
仕事が大変と感じる方は、介護業界に限らず多く存在します。人々は様々な悩みを抱えていますが、一人で悩むよりも誰かに相談することで気持ちが楽になることがあります。
上司や同僚など、身近な人に相談することで悩みの解決の手助けを受けることができるかもしれません。
自分なりのストレス解消法を実践する
プライベートでの趣味や好きなことをすることは、ストレスの解消法として有効です。プライベートが充実していれば、仕事に対する姿勢も前向きになり、きつい業務も乗り越えられるかもしれません。
ストレスを溜めないようにするのは難しいですが、自分に合ったストレス解消法を探すことは大切です。
より条件の良い施設を探す
現状を変えるために、より条件の良い施設への転職を検討するのも一つの選択肢です。
介護業界には特養だけでなく、有料老人ホームや訪問介護などさまざまな働く環境が存在します。他の施設を一度経験することで、自分に合った施設を見つけることができるかもしれません。そこで、介「カイテク」の利用がおすすめです。
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きついと感じたらひとりで悩まない|周りの方に助けを求めよう!
特養の現状を理解すると、介護業界は確かに厳しい環境だと言えます。しかし、業界トップクラスの給料やスキルアップのチャンスもあるため、全てが厳しいわけではありません。
きついと感じている方は、この記事で紹介した対処法を試してみて、悩みを解消する方向へ進むことをおすすめします。まずは、一人で悩むことなく、周りの人々とコミュニケーションを取ることから始めてみてください。