介護職の方のコミュニケーションは自然に体の痛みの話が増えると思います。肘が痛い、伸び切らないなど歳だからねぇと諦める方が沢山います。
指導経験がない専門職外の方でも安全に利用者さんに紹介出来るものを選んだのでコミュニケーションの一環としてこちらの情報をご利用いただければ嬉しいです。
痛みはここに起きる
肘の痛みには肘の内側、外側、真ん中の3つに痛みが起こりやすいポイントがあります。それぞれ肩に伸びる筋肉や手首側に伸びる筋肉が付着している場所です。
筋肉が固くなるなどして骨が引っ張られることで炎症やひどい場合には骨折状態になります。その分痛むポイントがわかりやすいため適切なリハビリも行いやすいです。
肘の角度どうなってますか?
肘の痛みについて考えるときに重要なのが肘の角度です。肘は力こぶを出すときに丸くなる上腕二頭筋と反対に位置する二の腕と呼ばれる上腕三頭筋がそれぞれ収縮と伸長をし肘を曲げ伸ばします。また肘から手首にかけては骨が2本あり隣り合った骨同士がねじれるように回転します。理想的な肘の角度は180°か90°です。
それ以外の状態で重いものをもったり、姿勢をとどめていると上腕二頭筋と上腕三頭筋の筋バランスが悪くなりどちらか一方への引っ張る力によってその付着部分に痛みが起こりやすくなります。
例えば寝ている時肘を曲げてお腹の上に手が乗っていたりしませんか?これは肘を曲げる筋肉である上腕二頭筋が常に収縮しているためこの姿勢が楽で自然にこの姿勢を取ってしまう状態になります。
この方が何か重いものなど肘を伸ばして取ろうとすると常に収縮状態にある上腕二頭筋が伸び切らない状態で重さがかかり、結果付着部分の骨に痛みが走るというような流れが考えられます。
基本的には肘が伸びた状態の180°で姿勢を作って貰い、デスクワークや重いものを持つ際は90°で作業するのがおすすめです。
肘のリハビリ
肘が伸ばしやすいか曲げやすいかによって内容は変わってきますが介護施設の利用者さん向けですので怪我のリスク等を極力省いた手軽に行っていただけるメニューを3つ紹介したいと思います。
フレンチプレス
寝ながらでも座りながらでも行えます。座りながらのほうが重力によって効果が高まるので座る体勢が取れる方は座りながら行いましょう。片手をなるべくまっすぐ上に上げます。肘がなるべく上を向いたまま上げた手と反対の肩を触ります。このとき二の腕上腕三頭筋にストレッチを感じればOKです。
ここから最初に手を上げたところまで腕を戻します。上腕三頭筋を伸ばしてからそこに力を入れて元の位置に戻すというようなイメージです。この動作の可動域をしっかり動かせる方はペットボトル等軽い重りを持って行うと負荷を増すことが出来ます。
この動作は上腕三頭筋を最大限伸ばしたところから動かします。普段の生活だと上腕三頭筋という筋肉が最大限伸ばされることはほとんどないため固くなりやすい部位になります。
肘のリハビリとして紹介していますが、肩周りの可動域を出すにもとても重要な場所なのでリハビリメニューとして非常に優秀なメニューになります。
適切に行えると10回も動かせば二の腕に使用した疲労感が来ますし、その状態で肩を回すとリハビリを行った側の肩がすごく楽に回るようになります。肘の筋肉は肩に繋がっているので自ずと肘も楽になります。このフレンチプレスを行うべき方の特徴としては尖っている肘の丁度真ん中が痛い方に試して頂きたいです。
上腕二頭筋ストレッチ
寝た状態、座った状態、立った状態いずれも行えますがお部屋の状況次第で実施出来るか変わるため少し工夫が必要になるかもしれません。立った状態で解説していきます。
肩の高さに腕を伸ばし壁に手の平をつけます。この時指先が体の外側に向くようにまた肘が伸びた状態で付けましょう。手のひらを壁に付けたまま指先と反対方向に体を回します。これは力こぶとなる筋肉の上腕二頭筋のストレッチです。この筋肉は肘を曲げる筋肉でこの筋肉が固いと肘が伸び切らない状態になります。
結果的に半端な角度で肘が固定され余計な負担がかかってしまうことで痛みにつながるケースが多いです。肘は伸び切ると骨でロックされます。骨がロックされると筋肉に力を入れなくても関節が安定するため腕が楽になります。
例えば腕立て伏せをイメージしてください。肘を伸ばし切った状態と肘が軽く曲がっている状態だとどちらが楽でしょうか。上腕二頭筋が固いと肘を伸ばしきることが出来ない為ずっと肘を曲げた腕立て伏せのような負荷が肘周りにかかります。このストレスを軽減するために上腕二頭筋のストレッチを力こぶストレッチと称して行っていただくとそもそも肘が伸びない方等変形が改善することはなかなか難しいです。
しかし可能性が0ではないですし肘が痛んでる場合痛みの緩和は期待できると思います。
ニーローテーション
どの体勢でも行えます。グッドサインを作り親指を内側に向けます。肘を固定し腕の骨を軸として親指がなるべく外側に向くように回し切ります。負荷は非常に軽いので20~30回ほど繰り返します。なるべく外側に回す動きを強く行い内側に戻す時にはあまり力を入れないようにしましょう。肘の構造のお話の中で手首側に2本骨が走っているとお話ししました。
この2本の骨の関節は車軸関節といい親指側の骨がくるくるを回る構造になっています。この回る可動域が狭くなることがあります。典型的な例は手の甲が上を向く状態です。寝た状態で考えると親指が内側を向いて手の甲が天井を向いた状態のことです。
その反対の動きは親指が外を向き手の平が天井を向いている状態です。肘への負担が少ないのはどちらかというと親指が外を向いた手のひらが天井を向いた状態になります。ただ人間の生活の中で物を書いたり作業をする際は親指を内側に入れて行うことが多く先ほどお伝えした車軸関節の部分の動きが悪くなり親指を外側に向ける動作の動きが悪くなっている方が非常に多く見受けられます。
このリハビリメニューにより肘の筋バランスが整えられることで変形の改善にも効果的です。
肘の角度の際にもお伝えしましたが寝ているときに肘がどうなっているか見るのはとても効率的なリハビリになります。このニーローテーションがうまく出来ない方は寝ている際手の甲が上を向いている状態になると思います。
仰向けにしろ横向きにしろ親指を一度外側に向けて寝る体勢を取ることで寝ている間もリハビリになるのでまずは自分の腕がどうなっているか寝る前に思い出してみてください。
介護士さんの方が貢献できる分野もある!
今回は肘のリハビリを3つ紹介しました。最後にもお伝えしましたがリハビリメニューを通して普段の姿勢がどうなっているか考えることでより効果的に体の改善を行うことが出来ます。
普段の体のポジショニングなどはリハビリ専門家では介入しづらく介護職の方が関与しやすい領域なのかとも思います。少しでもリハビリの領域の知識を知っておいてもらうことで利用者さんがよりよく生活していけると嬉しいですよね。もしリハビリの知識にご興味あれば運動指導業務がある単発バイトを利用してスキルアップを目指してみるのはいかがでしょうか。
利用者さんの体の動きが良くなることは介護士さん側の介助にとって楽になることでもありますし少しでも改善している様子を見られることは介護職のモチベーションにもつながると思います。
介護職を楽しく続けるために
今回は肘の悩みを解消するリハビリ方法を3つをお伝えしました。寝た状態が増えると手先の作業で生きがいを作る方も増えると思います。そんな時肘が痛いと何もしたくなくなりますよね?
そんなときアドバイスが出来る介護士さんがいたら利用者さんにとって救いになるのではないでしょうか。皆さんの介護活動が円滑になれば幸いです。