「重度訪問介護はきついって本当?」と考えている方もいらっしゃるでしょう。
障がいのある方を支える仕事をしたいと思っても、働き方が自分に合っていないと辛く感じる場合もあります。そこで今回は、重度訪問介護がきついと言われる理由や仕事内容、1日の流れ、給与の目安などをご紹介します。
重度訪問介護とは?仕事内容を解説
重度訪問介護とは、常に介護が必要な方の日常生活を総合的に支援する障害福祉サービスです。ここでは、重度訪問介護の仕事内容やヘルパーのできること、及びできないこと、重度訪問介護従業者の対応範囲や夜勤の仕事内容についてご紹介します。
仕事内容|ヘルパーができないことも紹介
重度訪問介護では、重度の肢体不自由者や重度の知的障害者、精神障害者を対象とし、常に介護を必要とする方々の支援を行います。ヘルパーが居宅に長時間滞在し、柔軟な対応を提供します。また、生活全般にわたる援助や、訪問中に起こりうる介護が必要な事態への見守りも含まれるのが特徴です。
重度訪問介護の主な仕事内容とできないことの例は以下の通りです。なお、できないことの定めは自治体ごとに異なるため、市区町村へ確認してください。
◆重度訪問介護の主な仕事内容
・身体介護:排泄、入浴、食事など
・家事援助:掃除、洗濯、調理など
・移動支援:外出時の移動中の介護
◆重度訪問介護でできないことの例
・直接本人の援助にあたらない行為
家族の分の調理や洗濯など。
・生業を援助する行為
内職や商品販売の手伝いなど。
・日常生活に支障が生じないと判断される行為
草むしりやペットの世話など。
・日常的な家事の範囲を超える行為
おせち料理の調理や大掃除など。
・散髪、カミソリでの髭剃り
散髪やT字カミソリの使用はできません。
・医療行為、服薬管理
医療行為(医行為)は、医師や歯科医師、看護師などの免許保有者のみに許されている行為のため、ヘルパーが行うことは禁止されています。
・単なる見守り
重度訪問介護で行えるのは、必要な介護に備えた見守りです。介護を想定しない単なる見守りは対象外となります。
・預貯金の引き出し、金銭管理
銀行やATMなどでの預貯金の引き出しや金銭の管理はできません。
・経済活動に関する外出
通勤や営業活動に係る外出など。
・社会通念上適当でないと判断される外出
競輪、競馬、パチンコなどのギャンブルのための外出や飲酒のための外出など。
・政治活動や宗教活動のための外出
政治的な活動や布教活動、宗教の勧誘など。
・通年かつ長期にわたる外出
通所や通学など。
※上記はできない場合が多い行為の例です。詳細はお住まいの市区町村でご確認ください。
参照:厚生労働省|障害福祉サービスについて
重度訪問介護従業者ができること
介護福祉士などのヘルパーと重度訪問介護従業者は、重度訪問介護に該当するサービスを提供します。ただし、重度訪問介護従業者として働く場合には、養成研修を受講し、修了が必要です。そして、修了過程によって対応できる障害者の区分や内容が異なるため、注意が必要です。
修了課程ごとの対応できる範囲は以下の通りです。
- 基礎課程修了者:障害程度区分4・5の利用者
- 追加課程修了者:障害程度区分4~6の利用者
- 統合課程修了者:障害支援区分4〜6の利用者に加えて喀痰吸引などの医療ケアが可能
夜勤の仕事内容
夜間の重度訪問介護では、利用者の就寝時に見守りの時間が多くなる傾向があります。主な行為内容としては、食事介助、排泄介助、更衣介助、就寝介助や起床介助などが中心です。状況に応じて必要な行為を行い、定時や希望時には体位変換を行います。その他の時間では、利用者の近くで見守りや待機、事務作業を行う場合が多いです。
重度訪問介護がきついと言われる理由7選!
重度訪問介護はきついと言われることがあるため、働くときに躊躇する方もいるかもしれません。ここでは、重度訪問介護がきついと感じる理由を7つご紹介します。
1.長時間勤務・夜勤がある
重度訪問介護はヘルパーが利用者宅に長い時間滞在し、支援を行うサービスです。1回の訪問が長時間にわたることが特徴です。また、夜間を通じてサービスを提供する利用者も多く、夜勤や早朝勤務が発生することもあります。シフト制のため、勤務時間にばらつきが出やすく、夜勤を避けたい方や一定の勤務時間を望む方には辛いと感じるかもしれません。
2.利用者への対応が難しい
重度訪問介護の利用者の中には、自分の意思を伝えることが困難な方もおり、コミュニケーションが難しい場合があります。利用者は自分の望むことが叶えられなかったり、意図がうまく伝わらなかったりすることによるストレスを抱えやすくなります。ヘルパーには利用者の気持ちや要望を理解するスキルが求められます。コミュニケーションの難しさから、重度訪問介護が厳しく感じる方もいらっしゃるでしょう。
3.介護技術の難易度が高い
重度訪問介護は重度の障害を持つ方を対象としたサービスです。そのため、高いレベルの介護技術と複数の注意点への配慮が必要です。疾病の影響で繊細な介護や臨機応変な対応が求められることもあります。心身の状態や介護の手順は利用者ごとに異なるため、技術的な難しさを感じる場合があります。
4.医療的ケアが発生する
重度訪問介護の利用者は、医療的なケアを必要とする方が多いのも特徴です。他の介護サービスに比べて、医療的ケアの提供が多くなり、それがプレッシャーにつながる傾向があります。一つのミスが利用者の生命に重大な影響を及ぼす可能性もあり、心理的な負担を感じる方もいるでしょう。
5.一人で対応する不安が大きい
重度訪問介護は基本的にヘルパーが一人で訪問するため、困難な事態が発生した際に協力できる人がいません。これは訪問サービス全体に共通する問題点ですが、重度訪問介護では特に対応が難しいケースが多く、不安も大きくなると言えます。
6.移動がつらい
重度訪問介護は利用者の居宅を訪問してサービスを提供するため、利用者ごとの移動が伴います。働くエリアや事業所によりますが、移動手段として徒歩や自転車、車を使用することが一般的です。夏の暑さや冬の寒さ、悪天候の日には移動が体力を消耗し、体力に自信のない方や、一か所での勤務を望む方には辛く感じるかもしれません。一日に複数の利用者へ対応する場合は、移動回数も多くなるため注意が必要です。
7.給料が安いと感じる
長時間のサービス提供や不規則な出勤時間に見合わない給料は、厳しいと感じる点の一つです。重度訪問介護は長時間の利用を想定しているため、短時間で行う居宅介護や訪問介護に比べ、時間当たりの単価が低く設定されています。その結果、提供する時間に対して収入が少ないと感じる方もいるでしょう。重度訪問介護の給与目安については次の項目でご紹介しますので、参考にしてください。
参照:厚生労働省|障害福祉サービス費等の報酬算定構造
重度訪問介護の給料
厚生労働省が行った令和4年度の調査によれば、重度訪問介護で働く常勤・非常勤の給与目安は以下の通りです。
・常勤:約31万円(手当などを含む1か月当たりの給与)
・非常勤:約10.6万円(手当などを含む1か月当たりの給与)
参考:厚生労働省|令和4年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査結果
重度訪問介護ヘルパーの1日の流れ
重度訪問介護を提供する事業所の多くは、交代のシフト制をとっています。ヘルパーの1日の流れを、日勤と夜勤の一般的なスケジュール例でご紹介します。
・日勤:2交代制の例(8:30~17:30)
8:30~勤務開始
夜勤者からの申し送りや伝達事項を確認
排泄介助、更衣介助、整容
9:00~朝食
利用者の希望を聞いて朝食準備、調理、後片付け
食事介助、服薬介助、口腔ケアなど
10:00~家事・見守り
掃除、洗濯等の家事
必要に応じた介護
11:30~昼食
朝食と同様に、準備や調理、食事介助、服薬介助、口腔ケアなどを行う
利用者への行為が終わり、問題なければヘルパーも昼食・休憩をとる
14:00~買い物・準備など
食材や日用品など、必要な品物を利用者と確認して買い物
利用者も一緒に買い物に行く場合は外出の準備
15:00~見守り・必要時の介護・事務作業など
利用者がテレビ鑑賞などしてくつろいでいるときは、近くで待機・見守り
必要に応じた介護
記録などの事務作業
17:30終了・帰宅
夜勤者に引き継ぎ退勤
・夜勤:2交代制の例(17:30~8:30)
17:30~勤務開始
日勤者からの申し送りや伝達事項を確認
17:40~夕食
朝食と同様に、準備や調理、食事介助、服薬介助、口腔ケアなどを行う
夕食後は見守り・必要に応じた介護
問題がなければヘルパーも夕食をとる
19:00~入浴・清拭・更衣など
入浴介助や清拭、パジャマへの更衣介助
22:00~就寝
排泄介助、就寝介助、就寝中の見守り
定時の体位交換や必要時の介護
記録などの事務作業・休憩
朝の起床介助
8:30終了・帰宅
日勤者に引き継ぎ退勤
重度訪問介護に向いてる人
重度訪問介護の仕事は、一人ひとりに丁寧に深く関わりたい方に向いています。利用者と長時間にわたり二人きりで過ごすため、雑談を通じて会話が深まりやすいです。また、日中だけではなく夜間も通じて24時間利用者の生活を支えたい方や、夜勤を希望する方にも適しています。
きついと感じた時の対応策
重度訪問介護の仕事がきついと感じた時の対応には、事業所に相談して悩みを解消する方法と、退職・転職する方法があります。また、他の事業所と掛け持ちして希望の働き方を目指す方法もおすすめです。
継続:事業所に相談する
重度訪問介護の仕事を続けていきたい場合、初めに取り組みやすいのが現在の事業所に相談する方法です。困っていることや悩みを上司に共有し、問題を解消しましょう。先輩ヘルパーとの同行訪問やサービス内容の見直し、利用者の変更等で対応できる場合もあります。
継続:他の事業所と掛け持ちする【おすすめ】
他の事業所と掛け持ちする方法は、現在の事業所に不満がなく、働き方を改善したい場合におすすめです。非常勤であれば、日勤のみの勤務や長すぎないサービスの組み合わせも可能です。1つの事業所で希望する時間数を確保できない場合、複数の事業所を掛け持ちする方法が有効です。掛け持ちで働く際に便利なアプリ「カイテク」の利用をおすすめします。
転職:他の重度訪問介護事業所に転職する
重度訪問介護の仕事を続けたいけれど、現在の事業所に不満がある場合や、相談しても改善されなかった場合は、他の重度訪問介護の事業所へ転職する選択肢があります。事業所によっては、日勤専従や夜勤専従など、複数の働き方を用意している場合もありますので、いくつかの事業所を比較して検討すると良いでしょう。
転職:他の介護サービスや他の業界に転職する
重度訪問介護の仕事自体が継続困難な場合は、他の介護サービスや他の業界への転職も検討しましょう。同じ訪問サービスでも、日中に1時間前後のサービスを提供する居宅介護や訪問介護であれば、基本的に夜勤や長時間に及ぶ訪問はありません。一人での訪問にプレッシャーを感じる方は、複数のスタッフが周囲にいる通所サービスが適している可能性があります。さまざまな職場を検討すると、自分に合った仕事が見つかりやすいでしょう。
あなたに合った働き方で重度訪問介護の仕事を充実させよう!
重度訪問介護は、一人ひとりに深く関わり、利用者にとって不可欠な支援を提供できるやりがいのある仕事です。ただし、勤務時間の変動や難易度の高さからきついと感じる方もいます。あなたの生活スタイルや希望に合わせた職場を選び、いきいきと働きましょう。